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代表のメッセージ


  • コラム:人生の師

    人生の師

    代表のメッセージ 2025年2月1日掲載

    「これは大事な本だけど、芳賀さんにあげるから」

    私にとって最も大切な一冊をくださったのは、人生の師である松岡浩先生です。

    松岡先生は、株式会社タニサケの創業者の一人として、害虫駆除剤の開発・販売を通して社会に貢献されました。

    松岡 浩先生

    松岡先生との出会い

    弊社で最初の松岡浩先生の講演会

    松岡先生との出会いは、2008年に都内で開催されたセミナーでのことでした。松岡先生が講師としてご講演され、その終了後に私がご挨拶に伺ったことがきっかけです。

    松岡先生は「人を大切にする経営」を実践されており、社員の皆さんやそのご家族、仕入先、顧客、地域社会など、関わるたくさんの方々を幸せにする経営の大切さについてお話されました。そのご講演に深く感動した私は、ぜひ弊社に関係する皆さんにもお話を伺いたいと考え、ご相談させていただきました。

    それ以来、2008年以降、計14回にわたり、社員研修や弊社のお客様・保護者様向けのご講演を通じ、多大なるご指導をいただきました。さらに、松岡先生が主催されていた「タニサケ塾」にも参加させていただく機会を得、弊社の全社員で岐阜県にあるタニサケ様の本社を訪問させていただきました。 

    松岡先生との出会いで得た、かけがえのないご指導と気づき

    松岡先生とのご縁を通じ、私は本当に有り難いご指導と多くの気づきをいただきました。

    今回は、その中から特にお伝えしたい3つのエピソードをご紹介します。

    ○トイレ掃除

    松岡先生が創業され、長年代表を務められた株式会社タニサケでは、トイレ掃除をとても重要視されています。これは、単なる清掃作業ではなく、人間力を磨くための実践として行われているものです。

    役職や立場に関係なく、社員全員が清掃に参加し、代表である松岡先生ご自身が率先して取り組まれていました。その掃除は徹底されており、便器の内側や床まで素手で磨くこともあります。私も「タニサケ塾」で、その実践をご指導いただきました。

    あるとき、松岡先生は床の小さなタイル一つひとつを社員一人ひとりに見立て、
    「この一人ひとり(タイル一つひとつ)をピカピカに光る人材に磨き上げることが大事だよ」
    と教えてくださいました。

    私が小便器を恐る恐る(笑)右手だけで洗っていたところ、それをご覧になった松岡先生が、
    「芳賀さん、それを片手間と言うんだよ」
    とおっしゃいました。

    私は決して嫌々やっていたわけではなく、むしろ楽しんで取り組んでいたつもりでした。しかし、その言葉を聞いた瞬間、100%の気持ちで臨んでいなかったことに気づき、恥ずかしさを覚えました。

    一流と称される方々が、日常的に「ゴミを拾うこと」を習慣にしていると聞きます。トイレ掃除を丁寧に行うことや、ゴミを拾うということは、目の前のことに「気づく」力を養うと同時に、一見すると避けてしまいがちなことに「立ち向かう姿勢」や「積極性」に培うことにもつながるのではないかと感じています。これは、人の成長にとってとても大切な考え方ではないかと思います。

    ○人のために、ここまでしてくださるのか

    2011年3月、東日本大震災で、私の実家がある岩手県山田町は大きな被害を受けました。

    松岡先生とタニサケの社員の皆様は、少しでも復興の力になればと、社員旅行の訪問地として岩手の被災地を選んでくださいました。その際、皆様全員で私の実家にも立ち寄ってくださいました。

    約1時間ほど滞在された後、松岡先生とタニサケの皆様は宿泊先のホテルに移動されましたが、その後松岡先生お一人で、再び私の実家を訪問してくださいました。

    マッサージがとても上手な松岡先生は、本来であれば社員の皆さんとの大切な夕食の時間であったにもかかわらず、また岐阜から岩手まで長距離移動をされてお疲れのはずなのに、父にマッサージをするためだけに戻ってきてくださったのです。

    そのお姿を目の当たりにし、

    「人のために、ここまでしてくださるのか」

    と、言葉では表しきれないほどの感謝と感動をただただ感じました。

    ○不思議な有り難いご縁

    板橋興宗禅師についても、松岡先生に教えていただきました。

    曹洞宗大本山總持寺で貫首もお務めになられた方で、松岡先生の著書やご紹介いただいた記事にも板橋興宗禅師のお言葉がたびたび掲載されていました。そのご縁から、私も板橋興宗禅師のご講演を拝聴する機会をいただくことができました。

    そのとき、ふと小学生の頃の記憶がよみがえりました。

    「總持寺といえば、石ケ森先生にお守りをいただいたな…」

    私は小学6年生のとき、大怪我をしました。その際、担任の石ケ森和子先生に總持寺の御守りをいただいていたのです。

    卒業後も時折ご連絡をさせていただいていた石ケ森先生に、

    「30年以上前に先生からいただいた總持寺の御守り、今も大切に持っていますよ。その總持寺のトップだった板橋興宗禅師のお話を、先日お聴きしてきましたよ」

    とお伝えしたところ、

    「えー、ほんとにー?! 板橋興宗禅師は、先生のお師匠さんなんだよ!御仏縁だねー」

    と思いがけないお言葉をいただき、私は大変驚きました。

    石ケ森先生は、小学校の教員を退職された後、板橋興宗禅師のもとで修行し、得度されていたのです。

    かつて、大変お世話になった恩師、石ケ森先生のお師匠さんにもお会いできたこと。この不思議で有り難いご縁も、すべて松岡先生との出会いがあったからこそだと、心から感じています。

    松岡先生への深い感謝

    私の師であり、大恩人である松岡浩先生は、2024年11月25日に逝去されました。

    松岡先生から学んだ「恩送り」---受けたご恩を直接その方にお返しできなくとも、別の方に与えることの大切さ。

    「これは大事な本だけど、芳賀さんにあげるから」

    そう言って松岡先生がくださった『職業と人生 仕事とは何か、生きるとは何か』*という本。

    松岡先生からいただいたご恩への一番のご恩返しは、これからの皆さんに対して私がしっかり「恩送り」を実践していくことだと肝に銘じています。

    松岡先生、深甚なる感謝を申し上げます。ありがとうございました。

    *『職業と人生』(田中良雄氏著 ごま書房)
    *『職業と人生』
    (田中良雄氏著 ごま書房)

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