宝ものは君たちの中にある

代表のメッセージ 2025年6月1日掲載

「志こそが運命を創る」

 大変お世話になっている方のご紹介で、以前からお会いしたいと思っていた方とご縁をいただきました。お話できたのはわずかな時間ではありましたが、そのひとときはとても感動的で、心に深く残るものでした。

「志こそが運命を創る」

 その方は、こうおっしゃいました。

 生まれ持った能力やその方の性格ではなく、「志」を立てることで、それを実現するための条件が整い、物事が動き始める――そういう考え方です。

「志」とは何か

 「志」とは、自分の信念や理想に基づき、人生をかけて成し遂げたいと願う強い意志のことです。単なる私的な願望や欲望とは異なり、生き方にもつながるものです。

もう少し具体的に述べると、志には次のような特徴があります。

  1. 理想に向かう意志
    単なる目先の欲望や目標とは異なり、「自分はこうありたい」「世の中をこう変えたい」という理想に基づくもの
  2. 長期的、普遍的なもの
    今日や明日で達成されるような短期のゴールではなく、人生を通して追い求めるもの
  3. 自分と他者、社会を結ぶもの
    志にはしばしば「自分のため」だけではなく、「他人や社会のため」という側面も含まれる

吉田松陰先生の志

 志ある素晴らしい人物はたくさんいらっしゃいますが、「志」という言葉から、私がまず思い浮かべるのは吉田松陰先生です。

 吉田松陰先生は、幕末の動乱期において、明治維新の精神的な礎を築いた人物の一人です。私塾「松下村塾」での教育を通じて、後の日本を担う人材、高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋、久坂玄瑞らに感化を与え「日本を変えた教育者」とも称されています。

 その吉田松陰先生が、門下生を指導するにあたって定めた心得七箇条『士規七則』の第五則に、次のような言葉があります。

「志を立てて以て万事の源と為す」

 志を立てることこそ、すべての出発点である――まさに、人生の軸となる考え方です。

志はすぐに見つかるものなのか

 とはいえ、「志」は誰にとってもすぐに見つかるものではありません。

 特に成長段階では、自分の強みや価値観が定まっていなかったり、社会や親など周囲の期待に応えようとする中で、自分自身の本当の想いとは異なる方向に進んでしまうこともあります。そして、「志」とは単なる目標や夢ではなく、「自分はどう生きるべきか」という人生観に根ざすものであり、時間をかけて育まれるものだと思うからです。

志を見つけるために大切なこと

 私は「行動すること」だと思います。

 では、どうすれば志が見つかるのか。

 日々の生活の中での学び、小さな成功や失敗、心が動いた瞬間、誰かの言葉に胸を打たれたとき――そうした一つひとつの経験の積み重ねが、「自分は何のために生きるのか」「何に心を燃やすのか」という問いへの手がかりになります。

 人との出会いや、書物を通して歴史上の人物を知ることも大切です。行動すれば、知らなかった世界に触れ、新たな人物と接する機会も増えていきます。行動の中で出会った人々や言葉に感化され、心の奥に眠っていた情熱が目覚めたり、自分の中に芽生えた「志の種」に気づくことがあるかもしれません。

 もちろん、行動する中で得られるのは、楽しいことや嬉しいことばかりではありません。ときには劣等感や挫折、虚無感にさいなまれることもあります。しかし、そうした苦悩の中でこそ、自分の内なる声に耳を傾ける機会が訪れます。

 小さくてもいい。自分の想いに基づいた行動をひとつずつ積み重ねること。そうすることで、自分だけの「志」が、少しずつ輪郭を持って立ち上がってくるのだと思います。

 むしろ、志とは苦しみと向き合った先にこそ見つかることが多いのではないでしょうか。

志こそが運命を創る

 冒頭で述べた、「志こそが運命を創る」という言葉。

 志を立てた瞬間から、人生の見え方が変わり、出会う人も、巡ってくる出来事も変わっていきます。行動が変わり、選ぶ道が変わる――そのすべてが、自らの志に導かれていることに、やがて気づいていくのではないでしょうか。

 志とは、未来を変える力。

  そしてそれは、誰の中にも芽生える可能性のあるもです。